トラックドライバーへの転職を考えて大型免許を調べると、費用の記載がばらついています。「18万円」と書いている記事もあれば、「35万円」と書いている記事もある。倍近い差です。
これは情報が不正確なのではありません。大型免許の費用は、あなたが今持っている免許によって決まるからです。中型免許を持っている人と、普通免許しか持っていない人では、必要な教習時間がまったく違います。だから金額も変わります。
つまり、費用を知るための最初のステップは、自分の免許証を確認することです。ここが分からないまま相場を調べても、自分に当てはまる数字は出てきません。
さらに、多くの記事が触れていない、あるいは軽くしか扱っていない論点が2つあります。ひとつは教育訓練給付金です。条件を満たせば教習費用の20%(上限10万円)、講座によっては最大50%(上限25万円)が支給されます。指定を受けた講座であることが条件なので、教習所選びの段階で確認しなければ受けられません。
もうひとつは深視力検査です。大型免許には、普通免許にはない奥行きを測る検査があります。ここで不合格になる人が一定数おり、しかも免許の更新時にも同じ検査があるという点が見落とされがちです。
この記事では、大型免許で運転できる車両、受験資格、取得方法、費用、期間、試験内容、合格のポイントまでを一通り整理したうえで、この2つの論点を具体的に扱います。
大型免許で運転できる車両
運転できる範囲
大型自動車免許では、車両総重量11トン以上・最大積載量6.5トン以上・乗車定員30人以上の自動車を運転できます。
これは上位免許にあたるため、中型・準中型・普通の範囲もすべてカバーします。
どんな仕事につながるか
長距離輸送:都市間を結ぶ大型トラックでの輸送。運送業の中でも収入が高めになる傾向があります。
大型ダンプ・ミキサー車:建設・土木の現場に資材を運搬します。
タンクローリー:燃料や液体を輸送します。危険物取扱者の資格が併せて必要になる場合があります。
大型バス(旅客の場合は大型二種免許が必要):人を運ぶ場合は二種免許が別途必要です。この記事で扱うのは一種免許です。
取る価値
トラックドライバーとして働くうえで、大型免許は担当できる仕事の幅を最も大きく広げる資格です。運送会社の求人でも、大型免許保有者を対象とした募集は条件面で優遇されることが少なくありません。
受験資格──年齢・経験・視力
年齢と運転経験
原則として、21歳以上であり、普通免許等を取得してから通算3年以上の運転経験が必要とされています。
ただし、一定の教習(受験資格特例教習)を受けることで、この年齢・経験年数の要件が引き下げられる制度も設けられています。詳細は各都道府県警察・公安委員会または教習所でご確認ください。
視力の基準
視力については、両眼で0.8以上、かつ片目がそれぞれ0.5以上が基準とされています(眼鏡・コンタクトレンズの使用可)。
普通免許より基準が厳しいため、現在の視力で満たせるかを事前に確認しておくことをおすすめします。
そして深視力
さらに、大型免許には深視力検査があります。これが次章の内容です。
深視力という関門
深視力検査とは
深視力とは、奥行きや距離感を正しく認識する能力です。大型車両は車体が長く、車間距離や後方の感覚を正確につかむ必要があるため、この検査が設けられています。
検査は三桿法(さんかんほう)の奥行知覚検査器を用いて行われます。3本の棒のうち、中央の棒が前後に動き、他の2本と一直線に並んだと思ったところでボタンを押します。
基準は、3回検査した平均誤差が2センチ以内です。
対象となる免許
深視力検査は、大型免許、中型免許、準中型免許、けん引免許、普通二種免許などの取得時および更新時に、通常の視力検査に加えて実施されます。
普通免許にはない検査なので、初めて受ける人が多い項目です。
落ちる人が一定数いる
視力そのものは問題なくても、深視力で不合格になる人がいます。片目の視力に左右差がある場合や、両目の使い方に偏りがある場合に起きやすいとされています。
不合格だった場合は、当日のうちに再検査を受けるか、後日改めて検査を受けることになります。
更新時にも同じ検査がある──ここが重要
見落とされやすい点です。深視力検査は取得時だけでなく、免許の更新時にも実施されます。
そして、更新時に深視力検査に合格できなければ、大型免許や中型免許などの資格が取り消され、普通免許と同じ扱いになるとされています。
つまり、これは一度通れば終わりの検査ではありません。職業として長く続けるなら、目の状態を維持していく必要があるということです。
事前に確認する方法
教習所に申し込む前に、深視力を測れるか確認しておくと安心です。深視力検査器を備えている眼鏡店などで測定を受けられる場合があります。
また、深視力の矯正に対応した眼鏡を扱う店舗もあります。「視力は足りているのに深視力で落ちた」という場合、矯正で改善する可能性があるため、眼鏡店や眼科に相談することをおすすめします。
教習所に入校してから深視力で不合格になると、費用と時間が無駄になります。入校前の確認は、リスク管理として合理的です。
取得方法は3つ
方法①:教習所に通学する
最も一般的な方法です。指定教習所の卒業検定に合格すれば、運転免許試験場での技能試験が免除されます。
利点:大型車両が用意されており、路上での練習も安全に行えます。教習内容が体系化されており、確実性が高い方法です。
注意点:費用がかかります。また、通学のスケジュール調整が必要です。仕事を続けながら通う場合、教習の予約が取れるかどうかが期間を左右します。
方法②:合宿免許
一定期間、教習所の近隣に滞在して集中的に取得する方法です。
利点:短期間で取得できます。通学より費用が抑えられる場合があります。近隣に大型免許の教習を実施している教習所がない場合の選択肢にもなります。
注意点:まとまった日数、生活拠点を離れる必要があります。在職中の場合は休暇の確保が課題になります。
方法③:一発試験(直接試験場で受験)
指定教習所を経由せず、運転免許試験場で技能試験を直接受ける方法です。
利点:費用を大幅に抑えられます。
注意点:合格難易度が高く、練習環境の確保が困難です。大型車両を運転して練習する場所を自分で用意する必要があります。すでに大型車の運転経験がある人以外には、現実的な選択肢とは言いにくい方法です。
未経験からの転職を考えている場合、通学または合宿が標準的な選択になります。
【独自】費用は「今持っている免許」で決まる
ここが、費用を調べるときの最重要ポイントです。
所持免許による費用の目安
大型免許の教習費用は、現在保有している免許によって次のように変わるとされています。
| 現在の所持免許 | 費用の目安 |
|---|---|
| 普通免許 | 35万円前後 |
| 準中型(5トン限定を含む) | 30万円前後 |
| 中型免許 | 18万円前後 |
普通免許からと中型免許からでは、およそ17万円の差があります。これは、必要な教習時限数が異なるためです。
なぜこれほど違うのか
大型免許の教習では、現在の免許で運転できる範囲からの差分を埋める形で教習内容が組まれます。
普通免許(車両総重量3.5トン未満)から大型(11トン以上)へは、埋めるべき差が大きくなります。一方、中型免許(11トン未満)からであれば、差は小さくなります。
したがって、技能教習の時限数が減り、費用も下がるという仕組みです。
まず自分の免許区分を確認する
ここで注意が必要なのは、「普通免許」と書かれていても、実質的な区分が違う場合があることです。
2007年6月1日以前に普通免許を取得した方は、現在は8トン限定中型免許として扱われます。
2007年6月2日〜2017年3月11日に取得した方は、5トン限定準中型免許として扱われます。
2017年3月12日以降に取得した方が、現行の普通免許にあたります。
免許証の取得日と条件欄を確認してください。「中型で運転できる自動車は中型車(8t)に限る」「準中型で運転できる自動車は準中型車(5t)に限る」といった記載があれば、それが該当します。
この確認をしないまま「普通免許からの費用」を前提に予算を組むと、実際の見積もりとずれる可能性があります。
中型を経由するべきか
「先に中型を取ってから大型へ」というルートを検討する人がいますが、合計費用では割高になるのが通常です。中型の教習費用と大型の教習費用を両方支払うことになるためです。
ただし、次のような場合には合理性があります。
大型の受験資格(21歳以上・経験3年以上)をまだ満たしていない場合。中型を先に取得して実務に就く選択があります。
会社が段階的に費用を負担してくれる場合。中型で入社し、実務を経て会社負担で大型を取得するというルートです。
まず中型の仕事で適性を確認したい場合。
費用に含まれるもの・含まれないもの
教習所の提示額に、適性検査料、検定料、卒業証明書の発行料、免許証の交付手数料が含まれているかを確認してください。また、技能教習が規定時限で終わらなかった場合の追加料金の有無と単価も、事前に確認すべき項目です。
「保証プラン」として追加料金なしのコースを用意している教習所もあります。
教習時間と期間の目安
教習の構成
大型免許の教習は、技能教習が中心になります。所持免許によって規定の時限数が異なり、中型免許を持っている場合は最も少なくなります。
学科教習については、すでに一種免許を保有している場合は免除されるのが一般的です(詳細は教習所にご確認ください)。
期間
合宿の場合:所持免許によりますが、おおむね1〜2週間程度が目安とされます。中型からであれば短く、普通免許からであれば長くなります。
通学の場合:教習の予約状況に大きく左右されます。繁忙期(1〜3月など)は予約が取りにくくなるため、期間が延びる傾向があります。
在職中に通う場合は、「平日夜間や土日の教習枠がどのくらいあるか」を申し込み前に確認しておくと、見通しが立ちます。
教習期限に注意
教習には有効期限が定められています。期限内に卒業できないと、それまでの教習が無効になる場合があります。仕事の繁忙期と重ならないよう、開始時期を選ぶことをおすすめします。
【独自】教育訓練給付金で実質負担を下げる
費用面で最も効果が大きく、しかも見落とされやすい制度です。
一般教育訓練給付金
雇用保険の給付制度です。一定の条件を満たした方が、厚生労働大臣の指定する講座を受講して修了した場合、支払った教育訓練経費の20%(上限10万円)がハローワークから支給されます。
大型免許の教習も、指定を受けた講座であれば対象になります。
特定一般教育訓練給付金
さらに、特定一般教育訓練に該当する講座の場合、訓練経費の最大50%(上限25万円)が支給されます。
大型免許のように、就職に直結する資格の講座がこの区分に指定されている場合があります。該当すれば、実質負担は大きく下がります。
受給の主な条件
雇用保険の被保険者期間が一定以上あることが必要です。
離職している場合は、離職の翌日から受講開始日までの期間が1年以内であり、かつ前職の雇用保険の加入期間が通算3年以上あることが求められます。
過去に教育訓練給付金を受給したことがある場合は、前回の受講開始日から今回の受講開始日までに、原則として3年以上の期間が経過している必要があります。
最重要:指定講座でなければ対象外
ここが実務上、最も注意すべき点です。
この制度は、厚生労働大臣の指定を受けた講座でのみ利用できます。指定を受けていない教習所で受講しても、給付の対象になりません。
つまり、教習所を決める前に確認する必要があります。申し込んだ後で「対象外でした」と分かっても、遡って適用することはできません。
確認と申請の手順
手順1:ハローワークで自分が受給資格を満たすか確認する。在職中でも相談できます。「教育訓練給付金の受給資格照会」という手続きがあります。
手順2:厚生労働大臣指定の講座かどうかを確認する。厚生労働省の教育訓練講座検索システムで検索できるほか、教習所に直接問い合わせても確認できます。
手順3:必要な事前手続きを確認する。特定一般教育訓練給付金の場合、受講開始前にキャリアコンサルティングを受け、ハローワークに届け出るなどの手続きが必要とされています。この事前手続きを踏まないと支給を受けられないため、必ず確認してください。
手順4:受講・修了後、定められた期間内にハローワークへ支給申請を行います。
制度の詳細は必ずハローワークで確認する
給付率、上限額、受給要件、必要な手続きは制度改正により変わることがあります。必ずご自身の状況をハローワークの窓口で確認してください。手続きの順序を誤ると受給できなくなるため、教習所に申し込む前の相談を強くおすすめします。
会社負担という選択肢
運送会社が費用を負担するケースがある
ドライバー不足を背景に、免許取得費用の全額または一部を会社が負担する制度を設けている運送会社は少なくありません。
中型免許で入社し、実務経験を積みながら会社負担で大型を取得する、というルートです。
確認すべき条件
負担の範囲:全額か一部か。教習費用のみか、検定料や交付手数料も含むか。
勤務継続の条件:「取得後◯年勤務すること」という規定が付く場合があります。
途中退職時の返還義務:一定期間内に退職した場合、費用の返還を求められることがあります。返還の条件と金額を、書面で確認してください。
取得までの期間:入社後すぐ取得できるのか、一定期間の勤務後なのか。
どちらを選ぶか
自費で先に取得する場合、応募できる求人が最初から広がります。転職の選択肢が増えるという利点があります。
会社負担で取得する場合、費用を抑えられますが、勤務継続の条件が付きます。
教育訓練給付金と組み合わせるなら、自費取得のほうが制度を使いやすくなります。この点も判断材料になります。
試験の内容と流れ
教習所を利用する場合の流れ
ステップ1:入校手続きと適性検査。視力(両眼0.8以上、片眼それぞれ0.5以上)と深視力の検査を受けます。
ステップ2:技能教習(第一段階)。所内コースで、車両感覚、基本操作、方向変換などを学びます。
ステップ3:修了検定・仮免許。所内での検定に合格し、仮免許を取得します。
ステップ4:技能教習(第二段階)。路上での教習に入ります。
ステップ5:卒業検定。合格すると卒業証明書が交付されます。
ステップ6:運転免許試験場での手続き。指定教習所を卒業していれば技能試験は免除され、適性検査などを経て免許が交付されます。
落ちやすいポイント
深視力:前述のとおり、入校時の適性検査で判明します。事前確認が重要です。
車両感覚:大型車は車体が長く、内輪差が大きくなります。左折時の巻き込みに注意が必要です。
方向変換・縦列駐車:所内検定での定番課題です。車体が長いぶん、普通車の感覚では通用しません。
路上での速度と車間:重量があるため制動距離が長くなります。余裕を持った運転が求められます。
これらはいずれも慣れの問題であり、教習で反復すれば身につく範囲です。
取得後のキャリアと年収
応募できる求人が広がる
大型免許を取得すると、長距離輸送、大型ダンプ、ミキサー車、タンクローリーなど、担当できる仕事の幅が大きく広がります。
運送会社の求人でも、大型免許保有者を対象とした募集は条件面で優遇される傾向があります。
年収への影響
一般に、長距離大型が最も高い水準になる傾向があります。ただし、拘束時間が長くなりやすく、生活が不規則になる面もあります。
なお、2024年4月からトラックドライバーにも時間外労働の上限規制(原則月45時間・年360時間、特別な事情がある場合でも年960時間)が適用され、あわせて改善基準告示も改正されました。長時間労働で収入を積み上げるモデルは制度的に制限されているため、過去の年収情報をそのまま参考にすることはできません。
職種別の賃金は、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」および職業情報提供サイト「job tag」で確認できます。
併せて取ると効く資格
けん引免許:トレーラーを運転する場合に必要です。
フォークリフト運転技能講習:荷役作業で使用する現場が多く、応募できる求人が増えます。
危険物取扱者(乙種第4類):タンクローリーなどで必要になります。
運行管理者:管理側へ進む場合の資格です。
よくある質問(FAQ)
大型免許の費用はいくらですか?
今持っている免許によって変わります。目安として、普通免許からは35万円前後、準中型(5トン限定を含む)からは30万円前後、中型免許からは18万円前後とされています。必要な技能教習の時限数が異なるためです。まず免許証の取得日と条件欄を確認してください。2007年6月1日以前の取得なら8トン限定中型、2007年6月2日〜2017年3月11日なら5トン限定準中型として扱われるため、実際の区分が「普通免許」ではない場合があります。
費用を抑える方法はありますか?
3つあります。第一に、教育訓練給付金です。厚生労働大臣の指定を受けた講座であれば、教育訓練経費の20%(上限10万円)、特定一般教育訓練に該当する講座なら最大50%(上限25万円)が支給されます。指定講座でなければ対象外なので、教習所を決める前にハローワークと教習所の双方で確認してください。第二に、合宿免許は通学より費用が抑えられる場合があります。第三に、運送会社の免許取得支援制度を利用する方法です。
深視力検査とは何ですか?落ちたらどうなりますか?
奥行きや距離感を認識する能力を測る検査で、三桿法の奥行知覚検査器を使い、3回の平均誤差が2センチ以内であることが基準です。大型・中型・準中型・けん引・普通二種などの取得時と更新時に実施され、普通免許にはない検査です。不合格の場合は当日中の再検査、または後日の再検査となります。重要なのは、更新時に合格できなければ大型や中型の資格が取り消され、普通免許と同じ扱いになるという点です。入校前に眼鏡店などで測定しておくことをおすすめします。
大型免許は何歳から取れますか?
原則として21歳以上で、普通免許等を取得してから通算3年以上の運転経験が必要とされています。ただし、受験資格特例教習を受けることで、この年齢・経験年数の要件が引き下げられる制度も設けられています。要件の詳細は各都道府県警察・公安委員会または教習所でご確認ください。あわせて、視力(両眼0.8以上、片眼それぞれ0.5以上)と深視力の基準を満たす必要があります。
中型免許を先に取ってから大型を取るべきですか?
合計費用では割高になるのが通常です。中型と大型の教習費用を両方支払うことになるためです。ただし、大型の受験資格(21歳以上・経験3年以上)をまだ満たしていない場合、中型を先に取得して実務に就くという選択には合理性があります。また、運送会社に中型で入社し、実務を経て会社負担で大型を取得するルートもあります。この場合、勤務継続の条件と途中退職時の返還義務を必ず確認してください。

